胡蝶の逢瀬に深紅の花を:後編
サキュバスのお姉さんの夢を見てから、一週間が経っていた。
前回お尻が倍…いや三倍に腫れるまで叩かれ(起きたら治ってたけど)もう当分は叩かれなくていい、と思っていたんだけど、一週間も経つとまた叩かれたいと言う気持ちが戻ってきていた…我ながらスパンキーとは中々懲りない生き物だと思う。

「お姉さんの夢、本当に見なくなったなー」

でも、そんな気持ちは中々届かないようで…お姉さんが言っていた通り、僕はあれから一度もお姉さんの夢を見ていない。いやまぁあんな定期的に同じ夢を見ていた方が不思議ではあるんだけど。

『早ければ一週間、遅くても二週間あれば終わると思うから』

あの言葉を信じるなら、今日からまた夢を見れる可能性がある筈だ……自分の夢の言葉を信じる、と言うのは変な気もするけど。

「…早く寝よ」

準備を全て済ませてベッドに入り、スマホを弄る事無く意識を落ち着け、夢を見れる事を期待しながら眠りに着いた。



…それを一週間、毎日繰り返した。でもお姉さんの夢を見る事は無かった。
夢の続きを見る方法なんて胡散臭い方法を調べて試してみたけど、お姉さんが言っていた二週間を超えても夢を見る事は出来なかった。
そんな風に日々を過ごして、最後にお姉さんの夢を見てから二十日程が経過した日…いよいよ試す物が尽きて、スマホをベッドへと放り投げた。

「…もう、会えないのかな」

考えてみれば、夢の続きを何度も見ている事が異常だったんだ。それにあんな内容の夢…今考えれば普通じゃない。

「…あの時がおかしかっただけで、今は普通に戻っただけなんだ…そうだよね、悪…くはないけど、ただの変な夢だったんだ」

そう言って頭の中で区切りを付ける、お姉さんの事を忘れ…はしないけど、気持ちは切り替えよう。

「よしっ!久々に遅くまでゲームでも…ふぁぁ」

大きなあくびをして気付く、最近ずっと早く寝ていたせいでまだ十一時だと言うのに眠い。

「…今日はゲームやめとこ」

眠気に従ってベッドに潜り込み、スマホを開く事も無く目を閉じて眠りについた。



「……んぅ…お母さん、流石にその年からプロゲーマーはキツイって……うぐっ…」

脚を何かに踏まれて目を覚ました、ボヤけた視界に自室の天井が映る。

「何…?お母さん…?」

上半身を起こして踏んだ物を見ようとしたが、それよりも先に…目が合った。

「…んぇ?」

大きく綺麗な瞳、整った顔立ち、扇情的な服装とそれに見劣りしないプロポーション。目の前に居たのは間違いなく…

「えっ?お姉さん…?」

いや、おかしい。ここは自分の部屋だ、いつもお姉さんの夢でいたあの部屋じゃない。
それにお姉さんの夢を見る時はこんな風に目覚める感覚はなく、いつも気付いたらあの部屋にいた筈だ。
でも目の前にいるのは間違いなくお姉さんで…

「あの、なんむぐっ!」

質問をしようとして開いた口が塞がれる、お姉さんに突然強く抱き締められた。

「やっと…!やっと会えた…!」

声も間違いなくお姉さんのものだ、僕の混乱はいよいよ頂点に達した。

「あぁダメ…もう我慢出来ない……!いいよね…?!」

お姉さんの腕から解放されたと思ったら、今度はベッド…の上に正座したお姉さんの膝にうつ伏せで押し付けられる。

「いや、あの!?お姉さん?!本当に何なんですかこれ?!」

お姉さんは僕の疑問に全く耳を貸さず、ズボンとパンツを脱がした。
何度もした体勢だけど、何の説明もなくこの状況を喜べる程染まってはいない。

「待って!待ってください!」
「…ゴメン、待てないや♪」

ベチィン!!!

「痛ぁぁ!?」

お姉さんの手が一切の手加減なくお尻に叩き付けられて、あまりの痛みに叫んでしまう。

「あれ?どうしたの?いつもみたいに我慢しないの?」
「いや、本当に待ってください!説明を…!」
「我慢してるのが我慢出来なくなっちゃう様子が好きなのに…まぁいいや♪その分泣いてもらうからね♪」

ベチィン!!!ベチィン!!!

「ひぎっ!うぁっ!」

お姉さんは全く僕の話を聞いてくれず、手を止めてくれる様子もない。

「まっ、一回落ち着いてください!」

お尻を手で庇い何とかお姉さんを止めようとする、けどその手は一瞬で押さえつけられてしまった。

「あー、こら、お尻ペンペンの邪魔しちゃダメでしょ?そんな悪い子にはキツい連打をプレゼント♪」

ベチィン!!!ベチィン!!!ベチィン!!!ベチィン!!!

「うぎゃぁぁ?!?」

連打の激痛に耐えきれず脚をバタバタと動かす。しかしその僅かな抵抗もお姉さんの脚が絡められることで出来なくなってしまった。

「も、もうやめてください!もう嫌です!」
「そんな訳ないでしょ?君が最初にお願いしたんだし、普段はもっとペンペンしてるんだから。嘘つくなんて悪い子だねー?」

必死の懇願すらも届かない、お姉さんの目が何か恐ろしい物が宿ったように妖しく輝いているような気がした。

「…そうだよ、君は本当に悪い子なんだよ…人を魅了して虜にしちゃうサキュバスを、こんなに誘惑するなんて…君のせいでアタシ、本当におかしくなっちゃったんだから…」
「ふぇっ…?お姉さん、本当に何を言って…?」
「……だから、サキュバスを魅了しちゃうとーっても悪い子には、とーっても厳しいお仕置きをしないとね…♪」

お姉さんが僕を抑える手に力を込める、そして叩く手を今まで以上に大きく振り上げた。

「…?!待って待って!アレはホントにダメです!」
「ダメじゃないよー?お仕置きって言ったでしょ?待てと言われて待つ訳ないよね♪」

ベチィン!!!ベチィン!!!ベチィン!!!ベチィン!!!ベチィン!!!
「あああああぁぁぁ?!?!」

お姉さんの強烈な連打が全て右のお尻にだけ振るわれる。交互に叩かれても耐えられない痛みが、片方だけに集中し脳で処理しきれない程の激痛として襲いかかった。

「やっぱりこれが一番効くみたいだねー♪凄い悲鳴…やっぱり君最高だよ…♪泣き顔も、泣き声も、震える体も…全部大好き…♪」

ベチィン!!!ベチィン!!!ベチィン!!!ベチィン!!!
「無理です!これほんとに無理です!お願いします!せめて左も!」
「大丈夫♪後で左にも同じ事してあげるから♪三分くらいしたら左行こっかなー♪」
「こんなの三分も耐えられません!もうホントに無理!」
「やだなー、耐えられないからするんだよ?…さぁ、ここからは三分間ノンストップで行くからね♪」
「そんっ…!?やだやだやだ!ほんとにやだ!」

ベチィン!!!ベチィン!!!ベチィン!!!…
「痛いぃ!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「うんうん。お尻いっぱい痛くして、いっぱいごめんなさいして、いい子になろうねー♪」

必死にお尻を振って逃がそうとするも、お姉さんの手がお尻の右側以外に当たる事はなく。僕に許されたのは届かない懇願をする事だけだった…

「ほーら大好きなお尻ペンペンだよー、いっぱい楽しんでね♪後二分で右側終わりだから、左側も楽しみにしておいてね?」



「……うぇ、あっ…?」

暖かい感触と、鈍い痛みで目を覚ます。

「あっ…!」

視界に入ったのは天井ではなく、僕の頭を撫でていたお姉さんだった。
先程まで目に宿っていた妖しい物は消え、今は不安そうな表情をしている。

「…ごめんなさい!!」

お姉さんが僕の頭から手を離すと、流れるような動きで土下座をした。

「…えっ?」

情報量の多さに頭がパンクしそうだった、そんな僕を置いてお姉さんは土下座したまま叫び続ける。

「私本当になんて事を…!本当にごめんなさい!責任を取るためならどんな事でも…いやもう奴隷として使ってもらって…!」
「ストップ!ストップです!」

なんか凄いことを言い始めたお姉さんを慌てて止める。

「あの…とりあえず、状況の説明をお願いします」
「あ…うん、そうだよね、まずそこからだよね…」

お姉さんも落ち着いたのか、土下座を止めてくれた。
僕も痛むお尻を庇いながら立ち上がり、お姉さんと向き合う。

「えーっと…一応確認なんですけど、僕の夢に出てきたサキュバスのお姉さん…ですよね?」
「うん、正真正銘、四ヶ月前から君の夢にお邪魔してるサキュバス本人だよ」
「じゃあこれも夢…ではないですよね」

さっきからお姉さんがいるこの部屋は間違いなく僕の部屋だし…何より、お尻がとてつもなく痛い。

「そうだよ、夢じゃなくて現実」
「……実在してたんですね、お姉さん」
「…アタシなんだと思われてたの?」
「……欲求不満と妄想から生まれたとても都合がいい夢?」

お姉さんは少し呆れたような顔をして、話を続けた。

「…まぁでも、間違ってはないかな。基本的にサキュバスは夢以外に干渉する事は許されてないし、そもそも肉体があるかも曖昧な存在だからね」
「…?どういう事ですか」
「えっとね、人間界と夢幻界の境界が…あー、説明すると長くなるからそこはまた今度ね」

…思えば、僕はお姉さんの事をよく知らない。夢の存在だからと言って知ろうともしてなかったのだが。

「とにかく、普通だったら現実で君と会うことは出来ないんだけど…一つだけ方法があるの」
「方法って?」
「簡単に言えば…こっちに移住するの、この世界の住民になれば普通にこの世界で活動出来るから」
「…もしかして、会えなかったのはその手続きとか準備で?」
「そう!そうなの!」

お姉さんが顔をこちらに近付けながら、その苦労を力説し始めた。

「一週間もあれば大体終わるなんて大嘘!基本的な手続きや申請だけで一週間以上取られて、そこから試験や実際の準備とかやってたら三週間経っちゃったんだよ…しかもその期間中はずっと連絡とか試験とか書類に時間取られて、睡眠以外に休める暇もなかったの…」
「それは…大変だったんですね」
「本当だよ…途中何回投げ出そうと思った事か…って、少し脱線しちゃったね」

一通り吐き出して落ち着いたのか、また話が説明に戻る。

「まぁそんな感じで移住の為の申請が終わって、やっとこっちの世界に来れたのが数時間前。疲れた体を休めたいとかも思ったけど…何よりも先に、君に会いたかったんだ」
「……」

何か…こう真っ直ぐに言われると、恥ずかしい。

「それで君のお部屋に忍び込んだら君が寝てて、最初は起きてもらって色々な事情を説明するつもりだったんだけど……その、三週間会えなかった分でもう限界だったんだよね。必死に抑えようとしてた所で君が起きて、君のお顔を間近で見ちゃったら…」
「…スイッチが入って、ああなったと」
「本当にごめんなさい!」

いつも余裕な感じのお姉さんが、まさか僕のお尻を叩けない事であんな風になってしまうなんて…

「うぅ…謝って許される事じゃないのは分かってるから、本当に私に出来ることなら…」
「…大丈夫ですよ…僕もずっとされたかったですし、それに…」

言うかどうか悩んだ後、正直に話すことにした。

「理性が保てなくなる程思われてた事は…嬉しいですから」
「…!!君って子は…!」

お姉さんに抱き締められて、僕も同じように抱き締める。夢の中で何度もした事だけど、今日は普段よりも暖かい気がした。

「……ねぇ、今更だけど、君の名前を教えて?」
「…蓮です、美空蓮」
「レン君か…アタシの名前はね、マヤ」

出会って四ヶ月、僕達はようやくお互いの名前を知った。

「あのね?サキュバスの移住っていうのは、ある目的の為にする事なの」
「目的って?」
「夢であった子と…その、あの、えーっとね」

お姉さんが珍しく言葉につまり、少し恥ずかしそうに口を開く。

「…ずっと一緒にいる為と言うか、添い遂げると言うか、そんな感じなんだよね…」

お姉さんの目が僕の目を真っ直ぐ見つめる、少しだけ不安そうに。

「ねぇ…アタシでいい?」

答えは自分でも驚くほど、自然に口から出ていた。

「…お姉さんが…マヤさんがいいです」
「…!!ありがとう!!!」

マヤさんの顔が満面の笑みになり、抱き締める力が強くなる。

「これからは夢の中じゃなくて、何時でもペンペンでき…!」

マヤさんが力を強く入れた事で僕はバランスを崩し、後ろにあったベッドに倒れてしまう…お尻から。

「ひぎゃぁぁ!?!?」
「あぁゴメン!大丈夫?!」

腫れたお尻に激痛か走る。マヤさんが助け起こしてくれたけどお尻の痛みで立つこともままならない。

「ヨシヨシ…本当にゴメンね、お尻こんな事にしちゃって…」

マヤさんが僕の体を支えながら、お尻を撫でてくれる。少しだけ痛みが和らぐ気がした。

「せっかく色々出来るようになったけど…今までみたいにお尻治らないから、注意が必要だね」
「はい…そうですね…ホントに痛い…」

…でも、今まで味わえなかったお仕置きが終わった後のお尻の痛みは…何かこう、良い。

「お尻固くなっちゃってるね…私何回叩いたんだろう…しばらくはまたお尻ペンペンお預けかぁ」
「…流石にこのお尻を更に叩かれるのは、ちょっと」
「そうだよね…」

いくらスパンキーでも、こんなボロボロのお尻に追撃なんて受けたら…

「…うん、そうだよね…絶対にダメだよね」

……あれ?

「こんな腫れて、凄く熱くなってるお尻にペンペンなんて。撫でられただけで泣きそうになってるのに、もっと痛くするなんて…絶対にダメ、絶対に…」

…答えを早まったかもしれないと、目に妖しい物が宿り始めたマヤさんを見て少しだけ後悔した。
キミタケ
2021年09月28日(火) 02時06分09秒 公開
■この作品の著作権はキミタケさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
どうも、何故か週刊まで始めた無計画男キミタケです。
という訳で前中後編に分かれたこの作品も完結です、前後編から増えるなどグダグダでしたがお楽しみ頂けたのでしたら幸いです。
あまり見ないタイプである、プレイとしてだけどラブスパではないスパンキングを書いた作品でした。
ディシでもラブでもない中途半端な物ですが、個人的には大好きなのでこれからも続けていきます。

次回はTwitterでネタを頂いた作品になるかと思います。

この作品の感想をお寄せください。
No.2  キミタケ  ■2021-10-07 09:59
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>>らら様
ありがとうございます!少し厳しくし過ぎた気もしますが気に入って頂けたのなら嬉しいです。
No.1  らら  ■2021-10-03 14:40
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容赦ない尻叩きがよかよか!オリジナルもアズレンも楽しみです。
総レス数 2

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